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中小の得意分野で攻める大型の新エネ研究開発支援

2023/09/19

今回は、NEDOによる2023年度第2回の「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」を解説します。この事業には「新エネ中小・スタートアップ支援制度」と「未来型新エネ実証制度」の2つの支援制度があり、今回は「新エネ中小・スタートアップ支援制度」の公募になります。

対象とする分野は「太陽光発電」「風力発電」「中小水力エネルギー」「バイオマス」「再生可能エネルギー熱」「未利用エネルギー」「燃料電池」「蓄電池」及びその他の「再生可能エネルギー」となっています。

また研究フェーズとしてはフィージビリティ・スタディ、基盤研究、実用化研究開発の3つの段階に分けられていて、助成金上限額が順に1,000万円、5,000万円、1.5億円と増えていくステージゲート方式ですが、どの段階からの応募も可能です。

なお、フィージビリティ・スタディと基盤研究については通常の助成である「社会課題解決枠」と国内のベンチャーキャピタル(VC)等から出資を受けている、または予定されていることが条件の「新市場開拓枠」の2種類があることから、タイプ数としては5つとなります。

「新市場開拓枠」は、昨年の政府方針である「スタートアップ育成5ヵ年計画」の受け皿の一つとして「研究開発型スタートアップ企業を支援する国内外のVC等の資金を呼び込む取組(公募要領p6)」であるとされていますが、残念ながら2020年以降採択実績がなく、空振りの状態です。

なぜ「新市場開拓枠」は実績がないのか?これはこの事業のテーマとなっている研究開発課題がかなり「ベタ」であるためではないかと思われます。

公開されている課題リストである「別添1」から目標に関するキーワードを拾ってみると、「安全性」「低コスト化」「保守管理」「効率向上」など、既存の技術の改善を目指すワードが主であり、はっきり言ってイノベーティブではありません。

つまり事業化すれば巨大な市場が期待できるような、いわゆる「ディープテック」から遠いため、VCの目を引かないのであろうと想像します。

しかし、2021年にこの事業をご紹介した際にもお伝えしましたが、このような課題は逆に、多くのものづくり中小企業が得意とするフィールドであることを意味します。即ち、新エネルギーの経験がなくとも「自社の技術でチャレンジできる」課題が見つかる企業が多いということです。

一つだけ例をあげましょう。太陽光発電利用促進分野に含まれる課題「A-3:太陽光発電システムを維持管理する技術の開発」の例として「太陽光発電システムの故障を早期検出するための技術」が示されています。

もしリモートで多数の電気機器を監視するシステムや、あるいは建物のガラスの破損を知らせる防犯技術などを持っていれば、太陽光発電の経験がなくとも応募できるような気がしませんか?

もしあなたが自社技術の応用範囲を探す目的で別添1の課題一覧を眺めていただければ、応募が可能な課題が1つ2つ見つかるかもしれません。

本記事は2023/09/19時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

家中の水鮮しき野分あと (正木 ゆう子)

TVで見る台風跡は、今や線状降水帯による被害で泥水に苦しむ家々ばかりとなり、若い人は掲句の意味が解らないかもしれません。この俳人とは同い年なので、地球が今より穏やかだった頃、台風が去った後の自宅の屋根や庭を濡らした風雨の跡が「鮮(あたら)しい」と感じた記憶を共有できるのです。