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医療に応用可能な分野の採択目立つ、大型スタートアップ支援

2023/10/03

NEDOによる第3回「ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業」(以下、「ディープテック事業」)の公募が開始されました。締切は12月7日です。

この事業については第1回公募の際、前編・後編に分けて解説しましたので、詳細についてはそちらをご覧いただきたいのですが、特徴をまとめると以下の通りです。

  • 「ディープテック事業」は、内閣府の「新しい資本主義実現会議」で決定された「スタートアップ育成5カ年計画」に示されている3本の柱の中で、第二の柱「スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化」を担う事業である
  • 以下の3つのスキームで構成される
    • STS:実用化研究開発の前半に該当し、上限額は3億円または5億円、助成率2/3
    • PCA:実用化研究開発の後半に該当し、上限額は5億円または10億円、助成率2/3
    • DMP:実証するフェーズへの支援であり、上限額は25億円、助成率2/3または1/2
  • VCまたはCVC等の出資者(以下VC等)からの、総事業費の1/3以上の出資が応募のための条件であり、さらにハンズオン能力や資金調達の対応力が審査対象となる「パートナーVC」の参加が、STSでは応募条件、PCA、DMSでは審査での加点要素
そして今回は第3回公募のタイミングで第1回公募の結果が公開されたので、その結果について考えてみます。まず数字をおさえると、
(以下、スキーム(応募件数/採択件数/採択率)の順に)
  • STS(45/9/20.0%)
  • PCA(50/7/14.0%)
  • DMP(18/7/38.9%)
【合計】応募件数:114件/採択件数:23件/平均採択率:20.2%

上限25億円のDMPの採択率が4割近いという結果に驚きますが、応募する企業のレベルは高いようです。

次に採択された23件のうち、18件について申請者名、助成事業名、パートナーVC名が公開されているので見てみましょう。助成事業名から判断したところ半分以上の10件は医療系のようです。そして宇宙関連、バイオ系が各2件、通信系、半導体、ロボット系、電池関連が各1件です。

案件の母数が圧倒的に少ないので、以上の技術分野の分布が何を表しているのかは不確かですが、可能性としては次のようなことが考えられます。
  • 医療系の専門分野の細分化が、医療系スタートアップの数を増やしているのかもしれない。
  • 医療系の技術はアーリーステージから事業化への道筋が見えやすいのでパートナーVCを説得しやすい可能性がある。
  • 通信系、半導体、ロボットなどは大企業の研究が進んでおり、スタートアップとしては競争が厳しそう。
なお、AI系がないのは手段と目的の違いで隠れてしまったためで、医療系10件の内3件はAIや深層学習を用いています。

社名公開された18社のウェブサイトを一通り見てみました。中には未公開の企業もありましたが、大学や医療機関からスピンアウトして創業から数年という企業が中心で、サイトデザインが洗練されており、そしてもちろん創業者をはじめとするメンバーが若いという特徴があるようです。

また、何社かはすでにスタートアップが対象のピッチコンテストでの受賞経験があるなど、ある程度の評価を得たうえでの応募もあるようです。これから資金需要が本格化するというフェーズのスタートアップの方は、本事業を一つの選択肢としてご検討ください。

本記事は2023/10/03時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

鰯雲 人に告ぐべきことならず (加藤 楸邨)

お彼岸を過ぎた先日、やっと空の高みに鰯雲を見つけてこの句を思い出しました。思い出すたびに楸邨は上手いなぁと感心します。ある程度歳を重ねれば、誰にも心あたりがある心情でしょう。「鰯雲」がとてつもなく効いています。