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医療機器開発を目指すスタートアップの「育成」を支援

2023/10/17

ものづくり中小企業やスタートアップの医療機器開発を支援する補助事業として、AMEDの医工連携イノベーション推進事業(以下、「医工連携」と表記)」があります。令和5年度は12月と6月の2回公募が行われていますので、間もなく公募予告が公開されると思います。

この事業は支援対象が学校法人や公益法人等とする公募枠もあるのですが、「医工連携(開発・事業化事業)」と、「医工連携(開発・事業化事業)ベンチャー育成」という2つについては、それぞれものづくり中小企業と設立5年以内の医療機器開発を目指すスタートアップの「育成」を支援します。

このうち「医工連携(開発・事業化事業)」については「遠隔/在宅診断・治療」や「画像・光学診断」など8分野前後の技術的課題が提示され、その内容が公募回ごとに微妙に変化します。従って、公募要領の公開前にご紹介するのは難しいので、12月頃の公募開始を待ってからご案内します。

ただし、もう一方の「医工連携(開発・事業化事業)ベンチャー育成」については「開発対象物が医薬品医療機器等法における医療機器に該当するものであること」以外には特に技術的な課題は与えられず、公募要領の内容が毎回ほぼ共通しています。

そこで今回は、経営資源が十分ではないスタートアップでも、早めの着手で応募に備えていただけるよう、前回の公募要領に基づいて令和6年度「医工連携(開発・事業化事業)ベンチャー育成」をご案内します。

さて、この事業の特徴は、革新的技術の製品化を最終目的としつつも、「採択事業者が、医療倫理、研究倫理、事業計画、規制対応、ビジネス戦略等で医療機器ベンチャー企業として知っておくべき事項について習熟すること」という、支援先の育成を目標としている点にあります。

このため、いわゆるフィジビリティ・スタディで求められるような「開発の基になる要素技術を具現化するための成果としての試作品やモックアップの作成」に加え、「投資家の評価に耐えうる事業計画の作成等、出資を得る可能性を高めるための準備を整える」ことを成果としているのです。

さらに、採択事業者に対して、事業開始2年目には医療機器ベンチャー企業を対象に、資金調達を目的とした事業紹介の場(いわゆるピッチコンテスト)に登壇することを課しています。事業名に「育成」が謳われている所以です。

逆に、応募条件として「応募時にベンチャーキャピタルの出資を受けていないこと」が挙げられていて、出資を受けられるまで成長したスタートアップは対象外となっています。

以上から、この事業が、事業名に「育成」が謳われている通りアーリーステージのスタートアップの「育成」を目的としていることをご理解いただけたと思いますが、さらにそれを明確に示す規定が、「委託事業」とされていることです。

ご存じの通り補助事業は消費税を除く研究開発費の総額の一部(1/2、2/3など)を負担するだけですが、委託事業であるこの事業は消費税を含む研究開発費全額をAMEDが負担します。

従って事業期間は概ね1.5年、研究開発費総額は直接費と間接費を合わせて2,600万円の事業となります。公募締切はおそらく1月下旬なので、条件が合うスタートアップは今から準備を進めてください。

本記事は2023/10/17時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

見えさうな金木犀の香なりけり (津川 絵里子)

金木犀の季節となりました。自転車通勤なので、ある日突然いくつかの街角であの香りに出くわし、開花に気づきます。塀際に金木犀の並木がある公園の横を過ぎる際は、その濃さはひときわで、「見えそう」という表現にうなずきます。とは言え、咲いて3日目には香りが薄れるので、1年の中のほんの一時の幸せです。