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ハイリスク/ハイリターンな技術開発事業、事前相談が一次選考?

2023/10/31

今回のご紹介は、2023年度の「研究成果最適展開支援プログラム A-STEP/実装支援(返済型)」です。多くのメニューを持つA-STEPは文部科学省の予算であることから、大学の研究者および研究者と企業との連携体への支援を原則としていますが、本事業のみ企業単独への支援というスキームになっています。

ただし、企業といっても大学等での研究成果を社会実装することを目指すベンチャー企業等に限定されており、この部分は文部科学省のテリトリー内であることを主張しています。

この事業の最大の特徴は、補助金ではなく、実施者であるJSTの表現では「開発費を貸与する」というスキームになります。もう少し具体的に説明しましょう。

  • 課題が採択された場合、開発費を上限の5億円までJSTが負担し、最長3年の開発期間終了時、評価委員会による事後評価が行われる。
  • 事後評価が「成功」の場合、開発費は全額、最長10年以内に返済するが、事後評価が「失敗」とされれば、実施企業が返済しなければならない金額が開発費の10%に縮小される。
つまり研究開発の成果が事業として成功した場合、返済額の5億円が負担にならないほど急激な利益の増加が見込める。一方で仮に失敗しても資金的なリスクが1/10で済む。ということなので、ハイリスク/ハイリターンな技術開発に適した支援スキームと言えそうです。

また、支援事業としてはめずらしく、4月1日から年度を通して1年間、事前相談・選考を随時受付するという公募方法です。年間を通じた採択件数は「若干数」とされているのですが、現在も公募が行われているという事実から、今からの応募も可能ということになります。

ただし、いきなり申請書類を提出することはできません。これがこの事業のもう一つの特徴なのですが、提出の前に、予備面談・応募相談という、なんと2段階に及ぶ手続きを通過しなければ、応募書類の提出ができないのです。

特に応募相談については、公募要領に「書類提出、複数回のヒアリング等に基き、JSTが事業計画・返済計画等の妥当性を確認」するとされており、これはある意味事前のヒアリング審査です。

即ち、この事業の「随時受付・随時選考」の実態は、外部の評価委員会による書類審査、面接選考の前に次のような事前審査が設けられており、これをクリアしないと、応募できないと考えるべきです。

予備面談:企業ニーズが本事業の目的に適合することを確認
応募相談:事業計画・返済計画が、本事業が求める品質レベルを超えていることを確認


さて、この仕組みは応募する側にとって負担でしょうか?よく考えると、本事業の仕組みは通常は申請後に行われる選考審査の内、事業目的の適合性や実現可能性、予算の適合性などを申請前に前出しで評価してもらえることになります。

逆に採択の可能性が低い場合は申請前にそのことが知らされるので、余計な負担が避けられるということになります。いずれにしても、もし大学等での研究成果を事業化する計画がある場合は、早いうちに相談するに越したことはないというのが結論です。

本記事は2023/10/31時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

紅葉にあたらしき紺空にあり (伊藤 敬子)

ここ数年、偶然が重なってもみじの季節に高尾山に行く機会が続いており、昨年も掲句のような景色が拝めました。今年は春に家人の病気快癒のお札をもらう目的で登ったのですが、そのお礼参りをするという目的ができました。気候のよさそうな日を選んでまた紺空と紅葉を拝んできます。