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医療系スタートアップ育成を目指す大型支援事業
2024/05/21
コンサルタントの淡河です。現在、AMEDによる令和6年度「革新的医療技術研究開発推進事業(産学官共同型)」が公募中です。最長5年間で委託研究開発費の上限が6億円というかなりの大型事業です。
産学官の研究開発の対象はオープンイノベージョン
重要な医療ニーズを満たす医薬品等の開発につながる機動的な産学連携。公募要領冒頭の「事業概要」には、このような記載があります。行間に日本が新型コロナワクチンやバイオ医薬品などで欧米から遅れをとっているとの反省がにじみ出ています。この反省を踏まえたのでしょう。複数のアカデミアやスタートアップを中心に据えた産学官連携体による「非競争領域での研究開発」を支援するとのこと。
「非競争領域での研究開発」とはオープンイノベーションと同義のようです。製品開発に向かう「競争領域」に突入する前段の研究開発。かつ、単独機関では対応が困難な共同研究開発の領域をターゲットとしています。
「委託研究開発」?いやむしろ…
ところで「委託研究開発」と言えば、消費税も含めて100%事務局が支援する事業です。ただし、本事業では他に条件が付きます。即ち「産学官共同研究企業」から、AMEDの支援と同額かそれ以上のリソース(ここでは研究開発費)の提供が必要とされています。
では「産学官共同研究企業」とはなにか?「採択された研究機関に研究費の支援」をし、かつ「研究機関と連携して研究開発を行う」企業。このように公募要領で説明されています。
であれば、これは、いわゆるCVC(コーポレイトベンチャーキャピタル)のことです。
つまり経済産業省的に表現すれば、AMEDとCVCの1:1のマッチングファンドでしょう。
仮にAMEDから提供される研究開発費が上限の6億円としましょう。CVCからも6億円以上の研究費が提供されるので、かなり大規模な研究開発事業です。
このようなCVCとは、もちろん医療系事業部門を有する大企業です。したがって、この事業の推進体を読み解くとこうです。「官(AMED)と民(大企業)が、シーズを持つ大学やスタートアップに資金提供し、イノベーティブな事業を創出する産学官の連携体」
医療系スタートアップエコシステム構築
一方、この事業はアカデミアタイプとスタートアップタイプの2種で構成されています。今回の公募では最大23(前者8,後者15)課題の採択を予定しているとのこと。つまり産学官の連携体により、毎年20を超える様々な医療系の研究開発を切れ目なく推進するスタートアップエコシステムを構築しようという計画です。
以前にNEDOによる「ディープテックスタートアップ」をご紹介しましたが、本事業はCVCからの出資比率が異なるものの構造はそっくりです。加えて、スタートアップエコシステムの構築という目的も同じです。
つまり「ディープテックスタートアップ」のAMED版ということです。医療系シーズの事業化を目指している研究機関、またはすでに独立したスタートアップは、検討必須の支援事業かと思います。
本記事は2024/05/21時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。
季節の俳句
人々に四つ角広き薄暑かな (中村 草田男)
草田男というひとは受けた印象をさらりと「もの」に置き換えるのが得意で、掲句も夏の到来を四つ角の広さで表して見事です。季節への期待が伝わりますが、当時は今ほどの酷暑はなかったからかもしれません。
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