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「中小企業成長加速化補助金」申請のポイント

2025/05/01

コンサルタントの南郷です。本日は、5月8日に公募が始まる「中小企業成長加速化補助金(1次公募)」(以下、「加速化補助金」)の申請に向けたポイントをご紹介します。

4月25日、加速化補助金の公募資料が「100億企業成長ポータル」に掲載されました。補助上限額が5億円という大型補助金のため、求められる投資計画書も相応にボリュームがあります。補助金は単に「制度を知っていればもらえる」ものではありません。ポイントを押さえ、自社の成長ストーリーと覚悟を正しく伝えることが、採択への近道になります。

加速化補助金、最大の応募要件は「100億宣言」

中小企業成長加速化補助金(1次公募)加速化補助金では、申請前に「100億宣言」を行うことが必須です。

「100億宣言」、なんだか迫力のある言葉です。

これは、中小企業が自ら売上高100億円という野心的な目標を掲げ、実現に向けた取組を社会に対して宣言する制度です。そしてその宣言内容は、ウェブサイトで公開されます。

これは単なる儀礼的なものではありません。経営者の顔写真とともに「売上高100億円を目指す」ことを公式に宣言するため、経営者自身の覚悟と責任が求められます。

ここで重要なのは、「売上高100億円を目指します」という意気込みだけではないということ。資金の出し手(審査側)が知りたいのは、「どうやって100億円を達成するのか」という実現プロセスの妥当性です。

例えば、「新製品投入による」売上拡大、海外市場開拓、新たな販路構築など、実現可能性のある戦略と具体的施策が示されなければ、高評価は得られません。

アドバイス

宣言内容は、単に気持ちを述べるだけでなく、数値・期間・施策を盛り込んで具体的に記載すると説得力が高まります。

投資計画書のポイントは「成長ストーリーの一貫性」

加速化補助金の審査項目においては、成長に向けたストーリーが「論理的かつ一貫しているか」が強調されています。特に「売上高100億円」という目標に対して、どのような課題を認識し、どのような施策を講じ、どのような成果に結びつけていくのかという一連の構造にぶれがないかが問われます。

単に、「成長トレンドの延長で自然に100億円に到達する」では説明不足です。各段階における投資の理由、外部環境の変化に応じた判断、組織体制の強化計画など、実現可能性を担保するためのロジックを丁寧に記載しましょう。

そして、申請書全体を通じて投資・賃上げ・成果がバラバラにならず、「一つのストーリー」を語れているかを最後に確認しましょう。

本記事では、投資計画書に記載する「賃上げ計画」と「売上計画」について、考慮すべきポイントを説明します。

賃上げ計画をベースに

加速化補助金の「賃上げ計画」加速化補助金において注意すべきポイントのひとつが賃上げ計画です。補助事業終了から3事業年度後、最低でも都道府県別の基準率(例:東京2.8%、全国平均3.2%)以上の年平均賃上げが義務付けられています。

そのため、売上・利益計画だけでなく、要員計画と賃上げストーリーを密接にリンクさせる必要があります。

「売上が伸びるから賃金も上げる」では弱いのです。「生産性を向上させ、付加価値を増やしたうえで賃上げする」という、より積極的な賃上げの筋道を示すことが求められます。

賃上げの指標選択では、
「給与支給総額」または「1人あたり給与支給総額」
のいずれかを選べます。ですが、実務上は「給与支給総額」で設計するほうが、要員増減への対応も容易で柔軟性が高いです。

アドバイス

足元の相場感(4~5%の賃上げトレンド)を考慮し、最低でも5%以上の成長率を目安に計画を組むと、審査側への印象も良くなります。

売上計画は「細分化+KPI管理」で説得力を高める

売上計画は、「毎年●%成長」といった単純な成長率掛けでは不十分です。特に、売上50億円から100億円への倍増計画を説明するような場合には、売上要素を分解し、各ファクターで成長要素を明示することが不可欠です。

たとえば、「売上高=顧客数×顧客単価」なら、以下の例程度にブレークダウンするのがよいでしょう。

顧客数の増加
=1. 新規顧客数+2. 既存顧客のリピート購入増
  1. 新規顧客数
    =アポイント件数×獲得率
    • アポイント件数=リード数(見込み客数)×リード獲得率
    • 獲得率=アポイントから成約に至る率
    • リード獲得数=広告施策数×広告反応率
    • または展示会出展数×名刺交換率 等も分解可能
  2. 既存顧客のリピート
    =既存顧客数×リピート率×購入頻度
顧客単価向上
=購入単価×購入点数
各要素をKPI(重要業績評価指標)として管理することで、成長のシナリオの解像度が高くなり、「なぜこの成長率が妥当か」をロジカルに説明できるようになります。

アドバイス

売上計画には、成長率だけでなく「どうやって伸ばすか」について、各要素のつながり(ドライバーツリー)を描く意識を持つと、非常に説得力が高まります。

まとめ~加速化補助金 申請のポイント

今回は、成長加速化補助金に向けた申請のポイントを見てきました。一言で言えば、「覚悟」と「筋道」です。
  • 100億円を目指すという覚悟を明確に示し、
  • そのための道筋を論理的に説明する。
これができれば、補助金獲得の可能性は大きく高まります。早めの準備と綿密な計画設計を進め、採択を目指しましょう!

本記事は2025/05/01時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

コンサルタントのひとりごと

「賃上げは難しい」

日本労働組合総連合会の発表によれば、2025年春闘では、全体で5%を超える賃上げが実施されています。インフレ率3%程度の環境下で、実質的な賃上げが進みつつあります。国の政策意図も一定程度実現されつつあるように見えますが、大企業に比べて体力の乏しい中小企業にとっては、なお難しい局面です。

安易な賃上げは景気変動への耐性を弱め、経営基盤を脆弱化させるリスクを孕みます。それでも、「投資なくして成長なし」。今は多少のリスクを受け入れ、「エイや」と踏み出すべき局面かもしれません。