革新的じゃない。でも現場が変わる──「実務改善に効く」省力化補助金 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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革新的じゃない。でも現場が変わる──「実務改善に効く」省力化補助金

2025/05/13

省力化補助金コンサルタントの南郷です。現在、「中小企業省力化投資補助金(一般型)」(以降、「省力化補助金」)が公募中(5月30日締切)です。

今回は、本事業にどのような企業に向いているのか、そして、申請書作成の際のコツをご紹介します。

「革新的な挑戦」より「日常の困りごと」に効く省力化補助金

「成長」、「新分野進出」。
最近の補助金では、このようなチャレンジングな取り組みが支援対象となるケースが多い印象です。

そうした中、省力化補助金は、「売上を上げたい。効率化したい。でも人手が足りない!」そんなジレンマを解消する実務改善型の支援事業です。

すなわち、「一見地味だが、現場では明確な課題になっている」手作業等の非効率的なプロセスの簡素化。
その結果、労力・時間・精神的な負荷を減らし、それを他の業務や人材育成に振り向けられるようにする。それこそがこの補助金の本質です。

省力化補助金に採択される企業とは?

本事業は、そもそも登録された省力化製品の導入への支援(カタログ型)から始まりました。
そして、今年から「一般型」が開始。今回、第2回公募となるこの「一般型」は、オーダーメイドの設備導入に対応した、より自由度が高いものです。

この「一般型」は新しい公募型であるため、「カタログ型」の事例から省力化補助金の傾向を見てみましょう。

「カタログ型」の事例では、従業員50人程度までの中小・小規模事業者がほとんどです。業種は和菓子屋、旅館、ガソリンスタンド、部品製造業などさまざま。ですが、いずれも共通しているのが「人の手に頼った非効率な作業を、自動化したい」という課題意識です。

省力化補助金が「実務改善向き」である理由がここにあります。

「労働生産性の向上」「賃金UP」を申請書で可視化大胆な戦略は看板に掲げなくて良い。
むしろ、「1日30分、現場の人の負担を軽くする」ことに、国がちゃんと意味を見出してくれる補助事業なのです。

この負担軽減を「労働生産性の向上」「賃金UP」として可視化することが応募要件です。

ポイントは「改善のロジック」の明快さ

申請書を作成する際に、この補助金で問われるのは、第1に現場で何がどう改善されるかのロジックです。

たとえば、
  • 導入前:2名で90分
  • 導入後:1名で30分
この差が生まれる背景には、「作業の自動化」「動線の短縮」「段取りの一体化」など、オペレーション上の具体的な改善があります。

そのため、申請書では、単に「時短になる」と記すのでは説得力がありません。「どの工程が省略されるのか」「どこで待機がなくなるのか」「スタッフの動きがどう変わるのか」まで踏み込んで説明しましょう。具体的な説明により審査側の理解が深まり、採択の可能性が高まります。

たとえば、
  • 飲食店の例:オーブン導入により、ガス火前に張り付きながらフライパンで焼いていた工程が不要となり、1人分の拘束時間(XX時間/日)が解放され、新たなメニューの開発を進めることができる。
  • 宿泊業の例:清掃ロボットの導入により、スタッフによる清掃時間(1人当たりXX時間/日)が不要になり、それを新たなサービス導入に活用できる。
  • 製造業の例:棚から部品を人の手で拾っていた工程(1人当たりXX時間/日)をAGV(自動搬送車)が代替することで、作業者がラインから離れずに済み、生産性が向上する。
このように、作業前後の違いを人の動きや時間の流れとセットで描写し、どこが「改善されるのか」を物理的・工程的に説明することが、補助金申請における説得力の鍵となります。

幅広い企業に開かれた、実用性の高い省力化補助金

省力化補助金は、業種を問わず申請可能な補助金です。

要件も比較的明確で、人手をかけていた作業を設備やシステム導入によって効率化することが申請内容の中心です。

このため、「業務の一部に負荷が集中している」「人員を増やさずに現場の回転率を上げたい」といった課題を持つ事業者であれば、概ね申請の対象となります。

その意味で省力化補助金は比較的裾野が広く、実務上使いやすいと言えるでしょう。

特に、「従来からの業務プロセスを見直したいが、初期費用の問題で着手できない」というケースには適しています。

申請にあたっては、前出のとおり、作業時間や人員配置の変化など、具体的なオペレーション改善の内容を整理し、数値で説明できるよう準備することが重要です。

特別な成長戦略や高度な技術革新がなくても、十分に採択可能性があります。補助事業の内容や審査の観点をしっかりと押さえ、取りこぼしなく申請書の内容を組み立ててください。

本記事は2025/05/13時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

コンサルタントのひとりごと

バークシャー・ハサウェイ社のウォーレン・バフェット氏(94歳)が、2025年末でCEOを退任し、後任にグレッグ・アベル氏を指名しました。

アベル氏は会計士の資格を持ち、財務面での素養に加え、企業経営の実務経験も豊富とのこと。

バフェット氏といえば、同社を通してさまざまな企業の株式を保有し、その発言や投資判断が常に注目されてきた存在。投資家としてだけでなく、経済全体にも大きな影響を及ぼしてきました。

そのバフェット氏が退任するとなれば、世界のビジネスの風景にも少なからず変化が訪れることでしょう。ひとつの時代の節目といえそうです。