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ディープテック・スタートアップ~採択率を高めるVC/CVCとの連携戦略~

2025/06/26

コンサルタントの南郷です。今回は、公募中のNEDOの「ディープテック・スタートアップ支援事業(DTSU/GX)」の採択を目指した戦略を考えます。今回ピックアップした要素は、VC/CVCとの連携戦略です。

スタートアップに伴走するVC/CVCに求められる能力

ディープテック・スタートアップ支援事業本事業では、国がスタートアップに「共同投資」するにあたり、その伴走者として信頼に足る民間投資家を連れてくることを「条件」としています。

それは、彼らの持つ「目利き力」と事業計画を成功に導く「伴走力」を、公的資金を投じる上での重要な判断材料としているからです。

したがって、VC/CVC選びは単なる資金調達活動ではないのです。むしろ、採択の確度を左右する重要な戦略的決定のひとつとなります。


理想のVC/CVC:事業計画を「支援」する者から、産業を「創造」する者へ

VC/CVCとの連携では、NEDOはどのようなVC/CVCが未来を託すに値すると判断するのか。

その理想像は、単に事業計画を「支援」する者ではなく、共に産業を「創造」する、いわば「共同創業者」

「指名待ち」するのではなく、未来の産業の姿を描き、自ら大学の技術シーズと才能ある起業家と繋ぎ合わせる。いわゆる「カンパニークリエーション」を行うVC/CVCです。

短期的なリターンが見えにくくても、日本の未来のために新たな産業の礎を築く。このような国家プロジェクトと軌を一にする思想こそ、NEDOの描く理想像と重なります。


VC/CVCを見極める4つの戦略的視点

理想の伴走者の姿を理解した上で、VC/CVCを評価する具体的な基準を考えましょう。以下に本事業に不可欠な4つの戦略的視点(評価基準)を提示します。


1.ディープテック・スタートアップ支援事業への実績と理解度

産業創造過去の採択実績があるVC/CVCは、審査のポイントや「ハンズオン計画書」に求められる内容を熟知しており、極めて有利です。

ですが、過去の実績がない場合も本事業の目的(=産業創造)への理解と情熱をNEDOは評価します。実績有無に関わらず、面談で必ず確認しましょう。


2.「伴走支援」の具体性と専門性

「ハンズオン支援」という言葉だけで納得してはいけません。「具体的に、誰が、何をしてくれるのか?」を徹底的に深掘りしましょう。

技術を理解する専門家の有無、販路拡大に繋がる事業会社の紹介可能性、CFO派遣などの経営体制強化の実績など、VC/CVCが持つ具体的な支援メニューと、それを実行する体制が整っているかを見極める必要があります。


3.長期的なビジョンと哲学の共有

ディープテックの事業化は10年を超える長旅です。VC/CVCが、目先のIPO(新規株式公開)だけでなく、その先の「デカコーン」や「社会課題の解決」といった、より長期的で大きなビジョンを共有してくれるかを見極めましょう。

創業者の哲学に心から共感してくれる相手でなければ、困難な道のりを共に乗り越えることはできません。


4.担当者個人のコミットメントと相性

最終的に事業計画を推進するのは、組織の看板ではなく「個人」です。

VC/CVCの担当キャピタリストが、事業計画に強い知的好奇心と情熱を持ち、十分な時間を割いてくれるか
そして何より、あなたを創業者として信頼し、長期にわたって議論を交わせる相手か
この人間的な相性は、極めて重要な判断基準です。


最高の「共同創業者」と共に、未来の産業を創造する

VC/CVCとの連携本事業におけるVC/CVCの選択は最も重要な経営判断です。いわば「未来の共同創業者」を探すことに等しい。それは、共にNEDOを説得し、事業計画の成功まで伴走する同志となるからです。

当然ながら、そこには事業計画そのものの力が必要です。
とりわけ本事業では、「社会的な大義」と「経済的な合理性」の両立が採択された事業計画に見られる共通点。
そして、そのような「圧倒的な価値」は、優れたVC/CVCを引き寄せることにもなります。

最高の連携先を見つけ出し、彼らの信頼とビジョンをあなたの力に変えること。それこそが、採択を勝ち取り、日本の未来を担うディープテック・スタートアップとして飛躍するための最も確かな戦略と言えるでしょう。

本記事は2025/06/26時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

コンサルタントのひとりごと

私は、かつてプライベート・エクイティの投資担当者として、投資先企業で「ハンズオン支援」を実践してまいりました。その経験から断言できるのは、真のハンズオンとは、単なる「助言」や「人脈紹介」といった耳触りの良い言葉ではないということです。

それは、投資先の事業を「自分ごと」として捉え、収益構造からオペレーションまでビジネスの隅々を深く理解し、自ら先頭に立って事業を前進させる強いリーダーシップに他なりません。そして、時には複雑に絡み合う株主や経営陣、従業員といった多様なステークホルダーと対話し、一つの目標に向けてまとめていく論理的な思考力とコミュニケーション能力が求められます。

こうした泥臭い実行力こそが事業価値を最大化させ、NEDOがスタートアップのパートナーに求める「伴走力」の正体なのだと考えています。