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「新技術開発助成」~採択事例を徹底研究!
2025/07/30
コンサルタントの南郷です。今回は、公益財団法人市村清新技術財団による「新技術開発助成」をご紹介します。
本助成金は、数ある研究開発系の補助金・助成金の中でもひときわ異彩を放つ支援事業です。
新技術開発助成は、知る人ぞ知る「優良案件」
この助成金が「別格」とまで言われる理由は、他の制度ではまず見られない、以下の3つの圧倒的なメリットにあります。- 助成金が原則「前払い」
- 助成率が「4/5」と非常に高い
- 対象経費に「消費税を含められる」
採択を勝ち取るための「申請書作成 7つのポイント」
本助成金の採択を掴むには、公募要領の「開発技術の要件」を正しく理解し、申請書に落とし込むことが不可欠です。ここで改めて、第109回~第114回の6回分、71件の採択実績から見えてきた、最重要な7つのポイントを解説します。
ポイント1 【知的財産権】 「特許」が必須。申請のタイミングは?
本助成金は「特許」の出願または取得が応募の条件です(実用新案は対象外)。とはいえ、公募締切日までに「出願」が完了していれば良いのです。ポイント2 【開発段階】 求められる「実用化」のレベルは?
「実用化を目的にした開発試作」が対象です。本助成金での「実用化」は、「量産(事業化)」レベルまでを求めるものではありません。したがって、ポイント3~6で示すような具体性をもって、自社の技術が持つ「社会を良くするポテンシャル」を示すことが重要です。ポイント3 【実用化の見込み】 「顧客の声」をどう反映する?
技術の先進性だけでなく、その技術を「待っている人」の存在に言及するのは極めて有効です。ですから、顧客である第三者から「製品化できたら使いたい」などの客観的な期待を記載すると、実用化の信憑性が格段に高まります。
ポイント4 【開発期間】 「1年以内」の正しい解釈と計画の立て方
新技術開発助成では、「原則1年以内」の開発期間が求められます。これは「1年間の開発後、翌年には製品・技術として世に出せる目途が立つ」という実現可能性を問うもの。そのため地に足の着いた開発スケジュールと、その後の展望を明確にすることが肝心です。ポイント5 【経済的効果】 主張を裏付ける「客観的データ」の探し方・見せ方
「大きな経済効果が期待できる」と主張するだけではあいまいであり、不十分です。説得力のある計画にするには、公的な統計データなどを用いて販売数や売上で具体的に示すことが重要です。ポイント6 【公共の利益】 自社の利益を超えた「大義」をどう語るか?
これは、新技術開発助成が最も重視するポイントのひとつです。自社の利益が「伝統文化の継承」や「若手医師の育成」といった社会や文化、未来にどう貢献するのかを熱く語りましょう。ポイント7 【他の助成金との関係】 「同時期でなければOK」の正しい理解
この点で重要なのは「同時期に、同じ開発内容で助成を受けていない」ことです。これに該当しなければ全く問題ありません。6回分の採択実績から見る「3つの潮流」
では、実際にどのようなテーマが採択されているのでしょうか。第109回~第114回の採択実績71件を分析した結果、大きく3つの潮流が見えてきました。- 社会課題解決型(医療・環境・インフラ・農業・文化)
最も採択されやすい王道カテゴリです。現代社会が直面する課題解決に直結する技術が高く評価されます。 - 産業基盤・プロセス改善型
日本のものづくりを支える、ニッチトップ技術や生産性向上のための技術です。 - 「技術の民主化」型
これまで専門機関でしか扱えなかった高度な技術を、より身近に、より安く、より簡単に使えるようにする技術です。
貴社の「技術」と「志」が採択への道
創設者の理念の下、運営される財団による「新技術開発助成」は、単なる資金支援ではありません。それは、優れた技術を持つ中小企業が、その「志」を社会で実現するための、極めて強力なパートナーを持つことです。この記事で解説したポイントと潮流を理解し、貴社の技術に眠る「社会を良くしたい」という想いを申請書に込めることができれば、採択への道は大きく開かれるでしょう。
本記事は2025/07/30時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。
コンサルタントのひとりごと
新技術開発助成の「前払い&高助成率」の破格の条件は、圧倒的な「財政基盤」によるものです。
本助成金の原資は、「税金」ではなく、市村清新技術財団の資産。令和6年度の財務諸表によると、「基本財産」は約542億円。その大半が創設者・市村清氏が創業した株式会社リコーその他の株式であり、有価証券だけで約521億円です。
同年度のこれら株式からの配当金収入(基本財産運用益)だけで約16.9億円。本助成金はこのような資産でまかなわれています。
一方、同年度の「新技術開発助成」の事業費は約5.37億円。他の支援事業を合わせても約10.6億円です。つまり、配当金収入だけで、本助成金を含めた支援事業総額を優に上回る盤石な財務基盤があるのです。
税金を原資とする国の補助金は、年度ごとの予算や法律に縛られ、柔軟な制度設計が困難です。しかし、創設者の理念と資産を基盤とする民間財団だからこそ、目先の利益に捉われず、真に研究者のためになる自由度の高い支援を、長期的に継続できるのですね。
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