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「省力化」に収束した「事業再構築補助金」

2024/04/10

「中小企業省力化投資補助金」(以降、「省力化補助金」)が公開されました。

経済産業省は昨年11月に「令和5年度補正予算案の事業概要」(PR資料)を公開。その中で「中小企業等事業再構築促進事業を再編」というコメント付きで紹介された事業です。

この事業の前身である事業再構築補助金は「コロナ禍を乗り切るための新たな取組」を支援。すなわち新規事業が対象でした。設備投資系の補助金では例を見ない建築関連費も補助対象。これは特長的で、大変間口が広い事業でした。

そのためか同資料に記載された「見直し」に対し、大きな変更のない継続が多くの事業者から期待されました。弊社にも多くのお客様から「再開はいつ?」とのお問い合わせを頂いておりました。

その「再編」事業が3月29日付で公開されました。これが、端的に言うと事業再構築補助金とは全く路線の異なる事業になっていました。

全く異質の「省力化補助金」

公募要領のp11に示された「本事業は省力化を目的とすることから、新規事業は対象外。この一文が、「省力化補助金」が事業再構築補助金と全く異なるものであることを象徴しています。

さて、この省力化補助金は、補助金を受け取る中小企業向けの公募だけではありません。以下の4つの段階でそれぞれの対象者の募集が行なわれるという、変わった建付けをしています。

公募の段階とその対象
  1. 製品カテゴリの創設(対象:工業会 申請受付中)
  2. 省力化製品・製造事業者の登録(対象:メーカー 申請受付中)
  3. 販売事業者の登録(対象:販売事業者 申請開始前)
  4. 補助事業の公募(対象:中小企業 申請開始前)

以上の括弧書きで示した通り、現在公募中なのは1および2の工業会とメーカーのみです。公募前の3および4、販売事業者と中小企業は公募開始日も示されていません。

また、販売事業者は中小企業と共同で本事業への申請を行うとされています。ただし、現在は簡略版の手順説明のみが公開されていて、詳細は分かりません。

IT導入補助金のように中小企業は情報を提供するだけで電子申請サイトでの入力作業を行うのは販売事業者の役割かもしれません。

購入品は「カタログ」から選ぶ

また、「省力化補助金」には特徴的なルールがあります。補助金で購入するものを事務局が公開したカタログから選ぶというものです。

そのカタログはまだ未公開で、現在は製品カテゴリだけが示されています。個別の製品については中小企業の公募が始まる前に公開されるのでしょう。

カタログから製品を選ぶというこの方法もIT導入補助金を連想させます。そのつもりで製品カテゴリを見ると、ハードウェアの設備ばかりです。ソリューションを提供するソフトウェア製品は一切含まれていません。

ご存じの通りIT導入補助金は逆です。ソフトウェアであるITツールの導入に限定して支援します。

向こう数年は省力化補助金とIT導入補助を2本のレールとして我が国の労働効率の改善を進めるつもりなのでしょうか。おそらく中小企業向けの公募が開始される頃にははっきりするでしょう。

現在公開されているのは製品カテゴリのみですが、自社の業務の省力化を検討されている方は一度目を通しておくと良いでしょう。
  9つの「製品カテゴリ」
省力化補助金 製品カテゴリ
 (画像クリックで拡大表示)

本記事は2024/04/10時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

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